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PMF新芸術監督ワレリー・ゲルギエフ氏就任コメント


P1030378.JPG私はPMFの伝統、そして特色を理解しています。レナード・バーンスタインがこの音楽祭の誕生を導き、大きな影響を与えてきました。そしてこれまでの25年に渡る間、多くの素晴らしい音楽家たちが、このPMFの豊かな伝統を築いてきたわけです。日本という国がこのような音楽祭を開催しているのは素晴らしいことだと思います。

偉大な指揮者たちは、バーンスタインもそうでしたが、晩年、自分の仕事の中で最も大切なことは若い音楽家たちとの仕事と考えていました。私も今彼らの気持ちがよくわかります。私は有名な素晴らしいオーケストラと共演を重ねてきましたが、今では若い音楽家たちとの仕事というのが大切であると感じています。私はこれまでアメリカのナショナルユースオーケストラや、スイスのヴェルビエ音楽祭、そしてPMFにも参加してきました。若手音楽家を育てるという仕事を積み重ねていく中で、いかにして若手を育てていくべきかということが見えてきます。それはテクニックだけではありません。彼らの音楽的ファンタジーを呼び起こし、開いて、広げていくこと。それが一番大切なことだと思っています。

PMFの芸術監督として、この数年のレパートリー選びは大切になってきますが、ベートーヴェンのピアノ協奏曲、例えば5番の皇帝、そしてショスタコーヴィチの交響曲10番を1年目のレパートリーに加えるといいのではないかと考えています。しかし、どの作曲家の何の曲を演奏するかということだけが大切だとは思いません。これらの大作曲家の曲を演奏すること自体が、若い音楽家たちにとって大きな喜びと利益になるのだと考えています。彼らにとって一番の師は偉大な作曲家たちです。彼らの前に立ち、導いていく芸術監督の立場として、作曲家を理解するためのプロセスをサポートし、ヒントを与える、そういうことが最も重要な役割だと考えています。

若手音楽家たちは日本の素晴らしい場所、自然豊かな札幌という場所で音楽祭期間中、数週間過ごすことになるわけですが、彼らにとって面白いと同時にとても意義のある数週間になってくれればいいと思っています。野外コンサートでの演奏経験なども大きな印象を与えることでしょう。私はPMFに参加する若手たちに、ただ一つのシンフォニーを発見するだけではなく、すべての作曲家について新しい発見をしてもらいたいと願っています。

PMFというのは若者に目を向けた素晴らしい音楽祭のひとつだと思います。若手音楽家の可能性を広げ、深め、才能を開花させていくことが可能な場であると。PMFは、非常に複雑な国や地域をカバーした音楽祭ですが、参加する若手音楽家たちの相互理解が進み、国際社会が、音楽を通してよりよくなっていくと私は信じています。
だからこそ、私はPMFの芸術監督になることに決めたのです。  

ワレリー・ゲルギエフ

2014.10.15 帝国ホテル東京にて

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