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12月16日はベートーヴェンの誕生日。2020年は彼の生誕250周年にあたり、クラシック音楽界にとっても大切なアニバーサリーイヤーです。音楽祭としてはPMF2020で開催するコンサートで楽聖を讃える予定でしたが、今年は“お墓参り”で彼を偲ぶことにしたいと思います。
そこで初登場のゲストをお迎えしました。文芸研究家で墓マイラーのカジポン・マルコ・残月(ざんげつ)さんです!
これまでに国内外の偉人2,500人以上を墓参しているカジポンさん。大のベートーヴェン好きで、奥様との入籍日は12月16日、引き出物はバーンスタイン指揮ウィーン・フィルの第九のCDだったとか。そんなベートーヴェン愛が高まった結果、原稿はミュージック・パートナー初のロング・エッセイになりました。
他でもない2020年の年末だからこそ、メルマガ誌上でベートーヴェンのお墓を訪ね、偉大な音楽家の人生と作品にまつわるエピソードをじっくりと読んでみることにしましょう。
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私をこの世に引き止めたものは、ただひとつ“芸術”であった
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『今、運命が私をつかむ。やるならやってみよ運命よ!我々は自らを支配していない。始めから決定されていることは、そうなる他はない。さあ、そうなるがよい!そして私にできることは何か?運命以上のものになることだ!』(ベートーヴェン)
僕はかつて同じ人類の中にベートーヴェンがいたという1点をもって、人間が地球に誕生したことは無意味ではなかったと確信しており、『ダンケ・シェーン(ありがとう)』と感謝の言葉を伝えるためにウィーンの彼の墓を訪ねました。初対面は1989年、21歳のとき。それまでベートーヴェンは存在が偉大すぎて、何かもう人間ではなく、架空のヒーローのように感じていたのですが、墓石を見た瞬間、『ほんとに実在したんだ!』と胸が熱くなりました。彼も僕らと同様に、人生に悩み、喜び、生き抜いて、今は目の前に眠っている…それを全身で感じました。
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30年の時を経て交響曲に昇華させた「第九」
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ベートーヴェンが最高傑作の「交響曲第9番」を完成させたのは54歳。1824年の初演はとてもドラマチックなものでした。まずウィーンの状況を説明すると、当時はフランス革命の影響が広がるのを恐れた皇帝が、人間の平等を訴える共和主義者を次々と秘密警察に逮捕させ大弾圧を行なっていました。平民出身の彼は身分制度反対の立場です。文豪ゲーテと散歩中に王室の行列と遭遇し、ゲーテが立ち止まって帽子を脱いで敬礼しているのに、ベートーヴェンは帽子をしっかり被り、『腕組みをしたまま堂々と行列を突っ切った』と手紙に書いています。逆に皇后陛下と王子の方が挨拶してきたといい、ゲーテがどうして脱帽しないのか尋ねると『王子は世界に何人もいるが、ベートーヴェンはただ1人だ』と断じました。手紙には『ゲーテにさんざん説教をした』とあります。彼より21歳も年上で人格者としても知られる大ゲーテにです。
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レナード・バーンスタインが語るベートーヴェンとは
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ベートーヴェンのお墓はメトロノーム型をしています。晩年にメトロノームが発明され、耳が不自由でも目で速度が分かることをとても喜んだそうです。「アンダンテ」は「歩くような速さで」とされていますが、歩く速さは個人でまちまちです。メトロノームで速度を指定すれば、作曲家が望む理想のテンポで演奏してもらえます。こうしたことから、彼は楽譜に速度を記した最初の作曲家になりました。イギリスで「第九」の演奏会が成功したことを知らされたベートーヴェンは『メトロノームのお陰』と讃えています。墓石がその形になって彼も喜んでいるでしょう。
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1967年大阪府生まれ。文芸研究家にして「墓マイラー」の名付け親。ゴッホ、ベートーヴェン、チャップリンほか101ヵ国2,520人に墓参している。信念は「人間は民族や文化が違っても相違点より共通点の方がはるかに多い」。
日本経済新聞、音楽の友、月刊石材などで執筆活動を行う。最新刊は「墓マイラー・カジポンの世界音楽家巡礼記」(音楽之友社)、NHKラジオ深夜便「深夜便ぶんか部 世界偉人伝」にレギュラーゲストとして出演中。次回の放送は12月29日(火)の予定。
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若さあふれる熱演に感動した!カジポンさんが選ぶ
PMFオーケストラに演奏してほしい3曲
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書籍のご案内
カジポンさんの墓参りコラムを収めた『墓マイラー・カジポンの世界音楽家巡礼記』が音楽之友社から発売されました! 墓所までのアクセスや音楽関連施設の情報も掲載。今年の年末は巨匠たちのエピソードと美しい写真を眺めながら、家でのんびり“世界旅行”してみませんか。
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2020年だからこその歓喜の歌を…
「札響の第9」2020 in hitaru
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2021年に創立60年を迎える札幌交響楽団。北海道唯一のプロ・オーケストラとして「札響」のニックネームで多くの人に愛されています。その最大の魅力は、雄大な大地を体現するような透明感あふれるサウンドとパワフルな表現力。現在、11名のPMF修了生が札響の団員として活躍しています。
師走といえばベートーヴェンの第九。札幌文化芸術劇場hitaruを会場に、今年も大人気の名曲シリーズ「札響の第9」を開催します。クラシック音楽の醍醐味は、やはりオーケストラの生演奏。2020年だからこその歓喜の歌で1年を締めくくり、明るく元気に新年を迎えましょう!
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2021年の夏、ふたたび“音楽の夏”に!
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