PMF Founded by Leonard BernsteinPMF MUSIC PARTNER 2018年9月号 vol. 47
 
9月6日(木)未明に発生した「北海道胆振東部地震」で被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。1日も早い復旧・復興を心よりお祈りいたします。
 

【期間限定公開】 PMFオン・デマンド
ハイビジョン映像&ハイレゾ音源で「感動、ふたたび!」

PMF2018のコンサート

公演のハイビジョン映像とハイレゾ音源を提供する「PMFオン・デマンド」。早くもPMF2018のコンサート(一部)を公式ウェブサイトで無料配信中です。
録画・録音の最新技術が、臨場感を再現し、感動をふたたび届けます。例えば、映像コンテンツでは客席からの風景とは一味違う舞台上のシーンを楽しむ、音源ではスコアを見ながら気に入った楽章を繰り返し聴くなど利用方法はいろいろ。
「PMFオン・デマンド」は12月28日(金)までの期間限定公開です。ぜひ一度チェックしてみてください!

ハイビジョン映像 PMFオーケストラ演奏会 プログラムA 〜チャイコフスキー没後125年に寄せて〜 PMFオーケストラ演奏会 プログラムC 〜ゲルギエフ、マーラーを振る〜/ハイレゾ音源 PMFオーケストラ演奏会 プログラムB 〜バーンスタインの世界〜 PMFもいわ山コンサート
感動、ふたたび!PMFオン・デマンド
 
セイジ・オザワ 松本フェスティバル視察レポート PMFとOMFの魅力を再発見! 撮影 © 山田 毅

セイジ・オザワ 松本フェスティバル(旧称サイトウ・キネン・フェスティバル松本)は1992年から長野県松本市で開催されている音楽祭です。
先月、ミュージック・パートナーの担当者が信州・松本に飛び、セイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)2018のコンサート(2公演)を鑑賞し、会場などを拝見しました。

ふれあいコンサートⅡ(8月25日) 撮影 © 山田 毅

メシアン、プーランク、サン=サーンスの室内楽プログラム。パリ音楽院で学んだ児玉麻里と児玉桃のピアノが光っていた。フランスのベル・エポック(Belle Époque)を感じる素敵なプログラミング。

パリ音楽院で学んだ児玉麻里と児玉桃
国宝・松本城

安土桃山時代から江戸時代に建造された日本最古の国宝の城。毎年、城を臨む松本城公園では市内の小・中学校や一般の吹奏楽クラブによるパレードが、国宝松本城本丸庭園では合同演奏会が開催されます。8月26日の気温は37℃!

国宝・松本城
オーケストラコンサート Aプログラム(8月26日) 撮影 © 山田 毅

会場は満員御礼。エル・システマ出身の若き指揮者ディエゴ・マテウス率いるサイトウ・キネン・オーケストラのチャイコフスキー5番に万雷の拍手!
ハイドンの協奏交響曲ではヴァイオリンの竹澤恭子とチェロの宮田大(PMF2008参加)が圧巻のパフォーマンスを見せた。
エル・システマは松本発祥のスズキ・メソードを基に作られたベネズエラの公的融資による音楽教育プログラムで、グスターボ・ドゥダメルなどの才能を輩出。

ウェルカムパーティー

長野県知事の阿部守一さん、数学者でOMF理事長の広中平祐さんの熱いスピーチが印象的だった。地元の人たちと経済界の“OMF愛”はすごい。会場は音楽祭の支援者や出演者で大盛況!

ウェルカムパーティーの様子 撮影 © 山田 毅
信州・松本は「楽都・岳都・学都」の三ガク都!

松本市のキャッチフレーズは“文化香るアルプスの城下町”。国宝・松本城の近くには「近代教育の生き証人」として知られる旧開智学校校舎、JR松本駅前には小澤征爾さん直筆の“楽都”の文字が刻まれたSEIKOの時計。

まとめ PMFとOMFの共通点や魅力とは

1. 米タングルウッド音楽祭の影響

PMF創設者のレナード・バーンスタインとOMF総監督の小澤征爾は師弟関係で、バーンスタインは1961年にオザワをニューヨーク・フィルのアシスタント・コンダクターに指名し、1964年のタングルウッド音楽祭でのデビューにも立ち会いました。また、タングルウッド音楽祭は1970年から作曲家のガンサー・シュラーが教育活動を、オザワがプログラムを、バーンスタインが全体を統括する“トロイカ体制”で運営されました。
バーンスタインはボストン交響楽団の終身常任指揮者でタングルウッド音楽祭の教育プログラムを発案したセルゲイ・クーセヴィツキーから指揮法を学び、タングルウッドでデビューしたオザワは音楽祭のオーケストラであるボストン響の音楽監督を30年近くも務めました。五嶋みどりの“タングルウッドの奇跡”も1986年の音楽祭で生まれたものです。タングルウッドの精神や風景はPMFとOMFに様々な影響を与えていると感じます。

2. 次世代の育成に主眼を置くオーケストラ

PMFオーケストラ(PMFO)は毎年オーディションでメンバーを選抜・編成する、いわば“年をとらないオーケストラ”です。サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)は創設メンバーと次世代メンバーがともに“進化を続けるオーケストラ”という印象を受けました。
どちらも主眼に置いているのは音楽家の育成で、PMFOでは教授陣がアカデミー生に、SKOでは新旧メンバー間で、技術や経験などを直伝・共有することによって、クラシック音楽を、芸術として伝統として未来につなげています。教育と時間(音楽祭を継続し、歴史を築くこと)の大切さを改めて実感しました。

3. 幸運を運び、イノベーションが起こる環境

“セレンディピティ”という言葉があります。素敵な偶然や予想外の発見、ふとしたことから幸運をつかみ取るという意味です。
ご存知のとおり、PMFOとSKOはレジデント(常設)のオーケストラではありません。今回の視察では、このことが音楽祭のいちばんの魅力であることを再発見しました。
背景が違うメンバーで毎年オーケストラを結成すること、活動期間には限りがある点など、両音楽祭では当たり前のことが、実は、今後も音楽祭を継続するうえでの最大の強みだということです。この多様性と新しい出会いが思いも寄らないエネルギーを創り出し、音楽的な“イノベーション”が起こる。また、その場に居合わせることは、音楽家にとっても聴衆にとっても“セレンディピティ”という偶然の幸運と言えるでしょう。
バーンスタインもオザワも、そのことを、タングルウッド音楽祭をはじめ数々の音楽活動を通して十分に知っているからこそ、日本でPMFとOMFを創設したはずです。音楽祭にイノベーションが起こる環境を作り、ここで生まれる感動は時代が変っても多くの人を魅了するとスコープした、両氏の先見性に敬服せずにはいられません。

音楽に無我夢中な20代のPMFオーケストラはもちろん感動的ですが、マチュアなサイトウ・キネン・オーケストラの『一流のプロたちが、大の大人がここまで必死にやるのか』という演奏に、とても心を打たれました。共通点も多い2つの音楽祭ですが、お互いに無いものを、お互いが持っているPMFとOMFであることも事実です。来シーズン以降、開催地の信州・松本でフェスティバルを体験してみてはいかがでしょうか。

ウェルカムパーティーの様子 撮影 © 山田 毅
セイジ・オザワ 松本フェスティバル
 

PMFオフィシャル・サポート
累積額は1,000万円に!個人寄付の大きな力

オフィシャル・サポート申込書

目的と使途を明確にして、個人の皆様から1,000円単位で寄付を募る「PMFオフィシャル・サポート」。PMF2013シーズンから始めた個人寄付の累積額が1,000万円を超えました!皆様のあたたかいご支援に深くお礼を申し上げます。
今、音楽祭にとって個人寄付は大きな力です。PMF2018の中間報告とともに、これまでの実績を改めてご報告します。

PMF2018 オフィシャル・サポート(個人寄付)の中間報告

今期は2,691,000円の個人寄付を賜り、PMFアカデミー生が練習と本番で使用した楽譜・楽器の費用5,559,537円に全額を充てさせていただきました。

PMFアカデミー生の様子

個人寄付(10口以上)の方にはPMF2018公式報告書とCDの送付をもって事業報告といたします(11月下旬から12月上旬を予定)。

1,000円の大きな力!個人寄付の累計額 PMF2013 オフィシャル・サポート 441,000円 PMF2014 オフィシャル・サポート 692,000円 バーンスタイン像(PMF2014) 1,627,000円※ PMF2015 オフィシャル・サポート 1,298,000円 PMF2016 オフィシャル・サポート 2,532,000円 PMF2017 オフィシャル・サポート 1,663,000円 PMF2018 オフィシャル・サポート 2,691,000円 個人寄付の累計額 10,944,000円(10,944口) ※バーンスタイン像の制作のために募った寄付の総額は、個人寄付(1,627,000円)と会場募金(631,014円)を合わせた2,258,014円です。
 
生誕100年記念 特別連載企画 バーンスタイン音楽の旅
Trip 12 1990年 レナード・バーンスタイン 72歳 ミュンヘン
曲目 モーツァルト:大ミサ曲 ハ短調 K. 427(1990年) 演奏 レナード・バーンスタイン(指揮) バイエルン放送交響楽団

バーンスタインは司祭だった。大芸術家であり哲学者であり、魔術師であり名教師であり世界に名を轟かす王者だったが、その多彩な姿をひとつの象徴に集約するなら、偉大なる司祭…神の意志を人々に説くスピリチュアル・リーダーだったと思う。宗派などは関係がない(バーンスタインはインタビューでしばしば仏陀の言葉も引用している)。「聖なる力とはどのようなものか」「人間はどこから来てどこへ行くのか」を、音楽と言葉で説き続けた。
死の半年前にバイエルン放送交響楽団と収録したモーツァルトの『大ミサ曲 ハ短調』はとてもバーンスタインらしい映像だ。バイエルン州北部に位置する人口8,000人ほどの小さな町ヴァルトザッセンの、美しいバロック様式の聖堂で演奏が行われた。バーンスタインがモーツァルトの未完のミサ曲を演奏するためにこの場所を選んだのは、教会の音響が完璧な条件を備えていたからだったという。4台のオルガンをもち多数の天使像が並ぶ内装も、カトリック的な荘厳さをあらわすこのミサ曲に相応しかった。バーンスタインとモーツァルトには共通点がある。驚異的な知性を持ちながら、そこから溢れ出す表現はフレンドリーで「みんなに向けられた」内容であることだ。人々は大きく開けられた門から入って深遠な世界へと導かれていく。二人とも巨大なインテリジェンスを使って、「この世に存在する意識すべてを」高めていく音楽を創造した。バーンスタインは若者向けのテレビ番組に出演するとき、「子供たちが飽きないよう」「置いてけぼりにしないよう」細心の注意を払っていたという。まだ何も書き込まれていない、純粋無垢な存在を何よりも大切にした。「人が学ぼうとする心は生まれつきのもの」という確信が彼にはあった。その生来の明るい意志を遮るものをなくし、大切に育てようと亡くなる間際まで命がけの闘いをしたのだ。
信頼するバイエルン放送響のメンバーに囲まれて、バーンスタインは全力でこの曲を指揮した。時折、苦しそうに胸のあたりを抑えている。もうだいぶ健康状態が悪化していたのだろう。それでも指揮は力強く、オーケストラと合唱から引き出される音はすさまじくパワフルだ。ここでのバーンスタインの瞳は、人間のものとは思えない。半分「神」になっている瞳なのである。
名歌手のフレデリカ・フォン・シュターデをはじめ、ソロ歌手たちは皆上品なスタイルで歌い、バーンスタインは清楚で美しい心を持つ芸術家を好んでいたことがうかがえる。最後の『ベネディクトス』の終わりに聖堂の鐘が鳴り、黙祷をするように聴衆とバーンスタインがこれを聴いている様子は、はっとするほど素晴らしい。
この町から近いベルリンでは前年に東西を分断する壁が崩壊し、バーンスタインはそれを実現したのは「聖なる力」だと語っている。演奏会の意義と世界平和を解く語りがDVDのボーナス・トラックに収録されており、やはりバーンスタインは素晴らしい司祭だったと思う。芸術には様々なアイデアや方法があり、その多彩さは「個性」として人々を楽しませ驚かせるが、横軸に広がった色とりどりの世界とは別に、垂直軸上の「絶対的な善」というものが存在する。バーンスタインが生涯をかけて伝えたのは、人間の中にある「至高の善」についてだった。

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※試聴できる期間はメール配信日から30日以内です。
あらかじめご了承ください。

小田島 久恵
音楽・舞踊ライター。岩手県盛岡市生まれ。岩手大学特設美術科を卒業後、出版社『ロッキング・オン』で編集者として働く。2年勤務したのちフリー、ロックのライターを続けながら、子供時代から好きだったクラシックの仕事も2000年頃からスタート。ここ数年は、年間約300のコンサート、リサイタル、オペラを取材する。著作に『クラ女のショパン』(河出書房新社・共著)『オペラティック!』(フィルムアート社)など。
Twitter:@hisae_classical
Leonard Bernstein at 100
 
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